振り子の幾何学
振り子に勢いよく初速を与えると、跳ね上がって糸がたるむことがありますね。
このとき、「糸がたるみ始める地点」と「球が落下して糸がピンと張る地点」の間には綺麗な関係があります。実は鉛直上方向から角度を測ると、角度の比(図の)は必ずになるのです!(図は不正確ですがご容赦ください)
この現象には次のような数学的な背景があります。
この命題は円に対する方べきの定理の放物線における類似なので、俗に「放べきの定理」などと呼ばれています。
証明. 適当に線形変換(行列表示の右上成分がのもの)と平行移動をすることで、放物線が、、の場合に帰着できる。の座標をそれぞれとすると、これらはの解なので
となり成り立っている。
これを使うと、円と放物線の交点の性質が明らかになります。
証明. の差は無視されるので、図のような角の取り方のみで示せばよい。と軸のなす角をとする。の交点をとすると、通常の方べきの定理より
一方上の命題から
ゆえにがわかる。なので命題を得る。
さて、これがどう振り子と関係するのでしょうか。
振り子が跳ね上がる際、糸がたるみ始めるまでは球は円周上を動きます。糸がたるむと、球は重力によって放物線を描きます。たるむ瞬間に球に撃力が働くことはないので、運動方程式を考えれば、糸がたるむ直前と直後で位置・速度・加速度が一致しています。これはすなわちその点で円と放物線が3重に接していることを表しています。
そこで上の命題で3点が一点に近づく極限を考えれば、それはまさしく冒頭の図でとなることを表しています。
実際にこの現象が起きるのか気になった方は、ぜひ実験して確かめてみてください。