奇跡の楕円曲線と144
私が最も好きな不定方程式の一つに、次のものがあります。
いわゆる楕円曲線の一種です。この方程式の整数解は全部でいくつあるでしょうか?
まず方程式の形からがわかります。順に試していけばすぐにという解が見つかります。ここから先はなかなか解が現れず、これで全てであるかのように思われます。
しかしこの方程式はそんなつまらないものではありません。実はこんな解もあるのです。
大きい解ですね。実際計算してみると
となり、確かに解になっています。一般にこのような大きな解がある不定方程式は手計算では解くことが難しいです。しかしこの方程式に限っては、実に鮮やかな方法でこの解を求めることができます。まさに奇跡の楕円曲線というわけです。
以下の方法は私が今年たまたま見つけたものですが(恐らくもっと昔から知られているとは思いますが)、発見した日の晩は興奮して眠れませんでした。
さて、準備としてPell方程式について復習しておきましょう。
証明は以下のサイトなどに丁寧にまとめられています。
それでは本題の証明に入りましょう。
証明. のみ考えればよい。と因数分解する。が平方数の場合、も平方数なのでとなる。平方数でない場合(は平方因子を持たない)とするとはを割り切るので、特にを割り切る。ゆえにのいずれかである。
の場合、で、は平方数とはなりえないので不適(はで平方元でない)。
の場合、もとの方程式に代入すれば
となる。右辺の素因数の数を考えればは奇数であり、また左辺は偶数なのでと書ける。このとき
なので不適(はで平方元でない)。
の場合、もとの方程式に代入すれば
ゆえには平方数でありと書くことができる。
なので補題(Pell方程式)よりあるが存在して
(ただし、はFibonacci数)となり、は偶数番目のFibonacci数かつ平方数である。Cohnの定理によれば、このような数はとしか存在しない。これについては以下の記事に詳しい証明がある。
よってまたはとなり、このときそれぞれが解を与える。
というわけで、という解はFibonacci平方数であるに由来していたのです。
ところではの二乗で、なおかつ番目のFibonacci数です。という数字は数学の至る所で重要な役割を果たしています。モジュラー形式のウェイトはですし、代数曲面論のNoetherの公式にはが含まれます。そしてそれらを繋ぐ組み合わせ論的な定理である点定理 というものも知られています。私は密かに、Fibonacci平方数144もこれらのと関係しているのでは、などと妄想しています。