フィボナッチ・フリーク

数学の小ネタ集。

Fibonacci Freak

等辺多角形と代数的整数

今回は次の面白い定理を証明します.

 定理.全ての辺の長さが等しい多角形に対し,その内角を反時計回りに\theta_1,\dots,\theta_nとする.\theta_1,\dots,\theta_{n-2}が全て有理数度ならば,\theta_{n-1}, \theta_n有理数度である.
 

証明には次の事実を用います.

 補題(Kronecker).代数的整数\alpha\in \mathbb{C}に対し,その全ての共役元の絶対値が1ならば,\alphaは1の冪根である.

証明.\alpha^n\mathbb{Q}上のモニック最小多項式f_n(x)\in \mathbb{Z}[x]とすると,f_nの次数はf_1の次数以下であり,またf_nの根の絶対値は全て1なので,三角不等式よりf_nの係数の絶対値は二項係数で上から評価される.よって\{f_n\}は有限集合であり,その根である\alpha^nも有限個の値しかとらない.\square

定理の証明.一般性を失わず辺の長さを1としてよい.n番目,1番目の頂点がそれぞれ0,1に来るように,多角形を複素平面\mathbb{C}上に配置する.仮定よりn-1番目の頂点\alphaはいくつかの1の冪根の和として表され,また|\alpha|=1である.特に\alphaはある円分体Kの代数的整数である.\mathrm{Gal}(K/\mathbb{Q})の作用は複素共役と可換なので\alphaの共役元は全て絶対値が1であり,上の補題より\alphaは1の冪根であることが従う.これが示したいことであった.