2^n+1を割り切る素数の密度は17/24
という数列を考えましょう。
これは全て奇数ですからの倍数は登場しません。
の倍数は上の列に出てきていますね。しかし
の倍数は見当たりません。実はこの列には
の倍数は現れないのです。これは
が
と循環し、が現れないことからわかります。
では、の素因数に現れる素数は、素数全体のうちどのくらいあるのでしょうか?
実はHasseによる次の定理(1966)があります。
ここで密度とは、以下の素数の個数をを
、その中で条件を満たす素数の個数を
とするとき
のこと(いわゆる自然密度)とします。
17という数が出てくるところが面白いですね。
今回はこの定理の証明をしたいと思いますが、初等的な証明ではないので、代数的整数論の基本的な知識(円分体における素イデアルの分解など)を仮定します。これについては以下のtsujimotterさんのブログにわかりやすい解説があるので、あまり詳しくない方はそちらも参照してみてください。
さて、ある条件を満たす素数の密度を計算する方法はどんなものがあるでしょうか?
整数論に詳しい人なら、その一つとして真っ先にChebotarevの密度定理を挙げるでしょう。あるいはその特別な場合である次の定理が有名です。
証明は省略しますが、比較的簡単なので今後このブログで紹介するかもしれません。
Hasseによる証明では、素数がを割り切るという条件をある代数体における完全分解という条件に書き直すことで、命題1に帰着させるのです。まずはこの書き換えをしていきましょう。議論を簡単にするため、素数は奇素数のみ考えます(こうしても密度には影響しません)。
素数が条件を満たさない、つまり
が解を持たないためには、
における
の位数が奇数であることが必要十分です。ここで次の補題を使います。
証明. (1)が解を持つならばだから、
の位数は
を割り切り、奇数である。逆に
の位数が奇数
ならば、原始根
をとって
とすると
なので
となり解
が得られる。
より
には
の
乗根が全てあるので、上の方程式が解を持つことは
と一次式の積に分解することと同値です。以上で次が得られました。
次にの部分を書き換えましょう。これは
と同値です。円分体における素イデアルの分解法則より、上の条件は
と言い換えられます(は
の原始
乗根)。ここで2つの
上Galois拡大体の系列
を
と定めます。一般に「合成体で完全分解
で完全分解」であることに注意すれば、結局次が得られたことになります。
命題1と組み合わせることで次が得られます。
これで問題は拡大次数を求めることに帰着されました!
から求めていきましょう。
のとき
次、
のとき
次拡大であることは簡単にわかります。
の場合、
なので、
を求めます。
と置きます。
なので上の拡大はKummer拡大
であり、Kummer理論より拡大次数は
の位数に等しくなります。ここで
*1より
のとき
なので、拡大次数は
とわかりました。よって
同様にについても
のとき
次拡大であり、
の時はKummer拡大
の次数が
なので
以上をまとめると次のようになります。
それでは密度を求めてみましょう。
ちゃんとが出てきましたね!これでHasseの定理の証明が完了しました。
実は私が最近読んだ論文の中に「Lucas数を割り切る素数の密度はである」という定理があって、その中に上の結果と証明が紹介されていたというのが今回の記事の経緯です。Lucas数の方の結果も同じように素イデアル分解の条件に書き直して密度定理を使うことで証明できるようです。
*1:が
の非Abel拡大
を含むことからわかります。