フィボナッチ・フリーク

数学の小ネタ集。

奇跡の楕円曲線と144

私が最も好きな不定方程式の一つに、次のものがあります。

y^2=x^3+20x

いわゆる楕円曲線の一種です。この方程式の整数解は全部でいくつあるでしょうか?

まず方程式の形からx\geq0がわかります。順に試していけばすぐに(x,y)=(0,0),(4,\pm12),(5,\pm15)という解が見つかります。ここから先はなかなか解が現れず、これで全てであるかのように思われます。

しかしこの方程式はそんなつまらないものではありません。実はこんな解もあるのです。

(x,y)=(720,\pm19320)

大きい解ですね。実際計算してみると

19320^2=373262400\\720^3+20\cdot 720=373248000+14400=373262400

となり、確かに解になっています。一般にこのような大きな解がある不定方程式は手計算では解くことが難しいです。しかしこの方程式に限っては、実に鮮やかな方法でこの解を求めることができます。まさに奇跡の楕円曲線というわけです。

以下の方法は私が今年たまたま見つけたものですが(恐らくもっと昔から知られているとは思いますが)、発見した日の晩は興奮して眠れませんでした。

さて、準備としてPell方程式について復習しておきましょう。

補題. ~x^2-5y^2=4の正整数解は
\dfrac{x+y\sqrt5}{2}=\phi^{2n}~(n\geq1)
なる(x,y)で与えられる。ここで\phi=\frac{1+\sqrt5}{2}黄金比)。

証明は以下のサイトなどに丁寧にまとめられています。

IMOmath: Pell's Equations

それでは本題の証明に入りましょう。

命題. ~y^2=x^3+20xの整数解は(x,y)=(0,0),(4,\pm12),(5,\pm15),(720,\pm19320)のみである。

証明. x\gt0のみ考えればよい。y^2=x(x^2+20)因数分解する。xが平方数の場合、x^2+20も平方数なのでx=4,y=\pm12となる。平方数でない場合x=s^2mmは平方因子を持たない)とするとmx^2+20を割り切るので、特に20を割り切る。ゆえにm=2,5,10のいずれかである。

m=2の場合、x(x^2+20)=(2s)^2(2s^4+10)で、2s^4+10\equiv 2~\mathrm{mod}~5は平方数とはなりえないので不適(2\mathrm{mod}~5で平方元でない)。

m=10の場合、もとの方程式に代入すれば

\left(\dfrac{y}{10}\right)^2=2s^2(5s^4+1)

となる。右辺の素因数2の数を考えればsは奇数であり、また左辺は偶数なので4Y^2と書ける。このとき

\left(\dfrac{Y}{s}\right)^2=\dfrac{5s^4+1}{2}\equiv3~\mathrm{mod}~5

なので不適(3\mathrm{mod}~5で平方元でない)。

m=5の場合、もとの方程式に代入すれば

\left(\dfrac{y}{5}\right)^2=s^2(5s^4+4).

ゆえに5s^4+4は平方数でありb^2と書くことができる。

b^2-5s^4=4

なので補題(Pell方程式)よりあるnが存在して

\dfrac{b+s^2\sqrt5}{2}=\phi^{2n}

\therefore s^2=\dfrac{\phi^{2n}-\bar\phi^{2n}}{\sqrt5}=F_{2n}

(ただし\bar\phi=\dfrac{1-\sqrt5}{2}F_nはFibonacci数)となり、s^2偶数番目のFibonacci数かつ平方数である。Cohnの定理によれば、このような数は1144しか存在しない。これについては以下の記事に詳しい証明がある。

integers.hatenablog.com

よってx=5s^2=5または720となり、このときそれぞれy=\pm15,\pm19320が解を与える。~~~\square

 

というわけで、720という解はFibonacci平方数である144に由来していたのです。

ところで14412の二乗で、なおかつ12番目のFibonacci数です。12という数字は数学の至る所で重要な役割を果たしています。モジュラー形式\Deltaのウェイトは12ですし、代数曲面論のNoetherの公式には12が含まれます。そしてそれらを繋ぐ組み合わせ論的な定理である12点定理 というものも知られています。私は密かに、Fibonacci平方数144もこれらの12と関係しているのでは、などと妄想しています。