フィボナッチ・フリーク

数学の小ネタ集。

Fibonacci Freak

立方体の"あの角度"

立方体ABCD-EFGHにおいて、\angle{AGF}の大きさが何度になるか知っていますか?

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\triangle{AGF}に着目して逆三角関数を使えば、この角度は\arctan \sqrt 2と表すことができます。これは果たして有理数度(弧度法で(有理数\times \pi)になるのでしょうか?

実は、より一般に次のことが示せます。しかも高校数学のみで!

定理. \arctan\sqrt n\in\mathbb{Q}\piとなる正整数n1,3のみである。特に\arctan\sqrt 2\not\in\mathbb{Q}\pi.

証明. 十分性は\arctan 1=\dfrac{\pi}{4},~\arctan \sqrt{3}=\dfrac{\pi}{3}より良い。\arctan\sqrt n=\arg(1+\sqrt{-n})\in\mathbb{Q}\piとなるとき、正整数mが存在して(1+\sqrt{-n})^m\in \mathbb{R}となる。さらにこれは

\displaystyle{ A_m:=\frac{(1+\sqrt{-n})^m-(1-\sqrt{-n})^m}{2\sqrt{-n}}=0 }

と言い換えられる。A_0=0,~A_1=1であり、x=1\pm\sqrt{-n}x^2-2x+n+1=0を満たすことからA_mは漸化式

A_{m+2}=2A_{m+1}-(n+1)A_m

を満たす。nが偶数のときは \mathrm{mod}~(n+1)で考えれば、m\geq 1に対し

A_m\equiv 2^{m-1}\not\equiv 0\mod (n+1)

なのでA_m\neq 0n\equiv 1~\mathrm{mod}~ 4のときも同様に

A_m\equiv 2^{m-1}\mod (n+1)

であり、\mathrm{mod}~4で考えればこれが0になるのはm=2,~n=1のときに限られる。
n\equiv 3~\mathrm{mod}~ 4のときはB_m=\dfrac{A_m}{2^{m-1}}と定めるとB_0=0,~B_1=1

B_{m+2}=B_{m+1}-\dfrac{n+1}{4}B_m

を満たすので、\mathrm{mod}~\dfrac{n+1}{4}で考えればm\geq 1に対し

B_m\equiv 1\mod \dfrac{n+1}{4}

であり、これが0になるのはn=3のときに限られる。\square

同様の手法で\arctan n\in\mathbb{Q}\piとなる正整数n1に限られることなども示せます。