置換の下降数と減少数
置換には興味深い性質がたくさんあります。ここではその一つを紹介します。
上の置換の全体をと書きます。に対し、その下降数をなるの総数と定めます。例えばという置換にはとの2箇所に「下降」があるため、下降数はです。
また、置換の減少数をなるの総数と定めます。上の例では減少数は1です。実はこれらには次の関係があります。
この定理は、下降数がの置換と減少数がの置換の間に1対1の対応を与えることで証明できます。証明の鍵となるのは次の性質です。
このことは置換でそれぞれの数がどこに移るかを追跡することでわかります。例えば上に挙げた例なら、はに、はに、はに、はに移るため、ここにという巡回置換があります。は動かないので元の巡回置換と見なせば
と表せます。
それでは定理を証明してみましょう。
定理の証明. 以下のように写像を定める。を
と交わらない巡回置換の積に書く。この書き方には任意性があるが、かつ(各巡回置換に含まれる最小元が最も右側にあり、それらは小さい順に並んでいる)という条件を付けると唯一通りに定まる。このときを
と定める。これは全単射である。実際、置換の表示を左から見てが現れる所までを括弧で括り、次にそれより右側の最小元が現れる所までを括弧で括り…と繰り返すことで逆写像が構成できる。
あとはが減少数の置換を下降数の置換に移すことを見ればよい。の減少数は定義からなる組の総数に等しい。ここで作り方から常になので巡回置換の端どうしは考えなくてよいことに注意する。さらに常になので、この総数はの下降数に等しい。
の元のうち下降数がであるものの個数はEuler数と呼ばれており、様々な性質が知られています。それについてはまた改めて記事を書こうと思います。