フィボナッチ・フリーク

数学の小ネタ集。

振り子の幾何学

振り子に勢いよく初速を与えると、跳ね上がって糸がたるむことがありますね。

このとき、「糸がたるみ始める地点」と「球が落下して糸がピンと張る地点」の間には綺麗な関係があります。実は鉛直上方向から角度を測ると、角度の比(図の\theta_1:\theta_2)は必ず1:3になるのです!(図は不正確ですがご容赦ください)

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この現象には次のような数学的な背景があります。

命題. 軸がy軸に平行な放物線上に4点A,B,C,Dをとる。AC,BDの交点をPとする。A,B,C,D,Pからx軸に下ろした垂線の足をA',B',C',D',P'とすると、
A'P'\cdot P'C'=B'P'\cdot P'D'.

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この命題は円に対する方べきの定理の放物線における類似なので、俗に「放べきの定理」などと呼ばれています。

証明. 適当に線形変換(行列表示の右上成分が0のもの)と平行移動をすることで、放物線がy=x^2-1AC:y=0BD:y=k(x-a)の場合に帰着できる。B,Dx座標をそれぞれ\alpha,\betaとすると、これらはx^2-1=k(x-a)の解なので

B'P'\cdot P'D'=|a-\alpha|\cdot|a-\beta|\\=|x^2-1-k(a-a)|\\=|x+1|\cdot|x-1|\\=A'P'\cdot P'C'

となり成り立っている。~~~\square

これを使うと、円と放物線の交点の性質が明らかになります。

命題. x軸に平行な軸を持つ放物線と単位円が図のように4点A,B,C,Dで交わっているとする。x軸正方向からA,B,C,Dまで反時計回りに測った角の大きさをそれぞれa,b,c,dとすると
a+b+c+d=0~\mathrm{mod}~2\pi.
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証明. 2\piの差は無視されるので、図のような角の取り方のみで示せばよい。AC,BDx軸のなす角を\theta,\phiとする。AC,BDの交点をPとすると、通常の方べきの定理より

AP\cdot PC=BP\cdot PD.

一方上の命題から

AP\cdot PC\cos^2\theta=BP\cdot PD\cos^2\phi.

ゆえに\theta=\phiがわかる。\dfrac{a+c}{2}=\dfrac{\pi}{2}-\theta=\dfrac{\pi}{2}-\phi=~\dfrac{(2\pi-b)+(2\pi-d)}{2}なので命題を得る。~~~\square

 

さて、これがどう振り子と関係するのでしょうか。

振り子が跳ね上がる際、糸がたるみ始めるまでは球は円周上を動きます。糸がたるむと、球は重力によって放物線を描きます。たるむ瞬間に球に撃力が働くことはないので、運動方程式を考えれば、糸がたるむ直前と直後で位置・速度・加速度が一致しています。これはすなわちその点で円と放物線が3重に接していることを表しています。

そこで上の命題で3点A,C,Dが一点に近づく極限を考えれば、それはまさしく冒頭の図で\theta_1:\theta_2=1:3となることを表しています。

実際にこの現象が起きるのか気になった方は、ぜひ実験して確かめてみてください。